2004年採集記録


 この記事は、よい子の蟲だより№203(2005年3月20日)および№207(2005年12月11日)に掲載されたものを、一部加筆修正してアップしたものです。


■ 4月3日(土) 近場のギフ(パート1)

 異動して4年目になる今の職場は春先は殺人的に忙しく、この時期遠出する元気がない。そのうえ疲労の蓄積が腰にきてコルセットを手放せない状態とあっては、今年も近場でお茶を濁すしかない(「そんな状態なら家でおとなしくしていろ!」という声、いずこより)。

《 瀬戸市白岩町 》

 「蟲だより」でお馴染みのポイントだが、私自身は初めて行った。かなり環境は良いように感じたが、ギリギリ未発生なのか1頭も見ず。サクラ3分咲き。 

《 瀬戸市上半田川町 》

 上半田川(かみはだがわ)の集落から笠原町へ抜ける林道を探索。沢沿いの比較的明るい雑木林で、ところどころスズカカンアオイが見られ環境的には悪くない、と思われたが、ここでも1頭も見られず。

《 笠原町潮見公園 》

 笠原町はちっぽけな町なのでラベル的には馴染みがないが、ギフの多産地である多治見市と瀬戸市に挟まれているのだから、きっとギフは多いに違いない(と、勝手に決める)。地形図を見ると瀬戸市との境界の尾根に美味しそうな林道が続いており、ここを攻めることにする。

 上半田川の集落から笠原町へ抜ける林道は、ダートだが四駆なら苦もなく登れる。登り切ったところで尾根道に合流するのだが、アッとびっくり。手持ちの地形図には載っていない立派な道路が尾根沿いにできていて、付近は広大な緑地公園になっていた。公園は周辺部でまだ造成を続けており、あちこちに伐採地がある。この日はそうした伐採地で出たての1♂をゲット。付近でカンアオイの自生を確認した。

[記録]4月3日(土) 同行者 なし

愛知県瀬戸市白岩町   ギフ null

愛知県瀬戸市上半田川町 ギフ null

岐阜県笠原町潮見公園  ギフ 1♂

 


■ 4月10日(土) 近場のギフ(パート2)

 季節は最高。天気も最高。どこへ行こうか迷った挙句、先週下見した場所が気になって、結局同じ場所へ行ってしまった。

《 瀬戸市白岩町 》

 こんな絶好の日に、こんなローカルなポイントへ朝一番で来ているヤツは他に誰も居ない。勿論ギフは発生していたが、3頭ネットした内の2頭が♀(未交尾)では既にピーク過ぎと思われた。にもかかわらず数は意外に少なく、すぐに転戦。

《 笠原町潮見公園 》

 先週十分下見がしてあるので、何か所かある伐採地の小ピークを効率的に見て回る。しかし、ここも期待に反して意外に密度が低く、花見客などの人出が多く、いまいち気合が入らず適当に転戦。

《 瀬戸市上半田川町 》

 傾斜のある発生地ポイントへ中途半端な時間に入ったのが失敗だったらしく、出払った後なのか1頭も見ず。時間のロス。

《 小原村道慈 》

 転戦するにはやや距離があったが、何とか正午過ぎには到着。ここも何度となく「蟲だより」に登場している場所で、マップなど詳細なものが無くともすぐにポイント判明。しかし、カンアオイはほんのチョロチョロ生えで、実に狭い範囲で発生している様子。周辺もそれなりに探したつもりだが、ポイントから少し離れるとギフもカンアオイも見られなかった。 

《 小原村五六 》

 既に時間的に遅かったが、翌日の下見のため明智町下吾妻へと車を走らせる。山道を飛ばしているとケータイが鳴る。こんな場所じゃ出られないので少し走って路肩に停め、着信履歴を見ると雅恵からだ。かけるが出ない。バカ者! 出ないのならかけてくるな。先を急ごうと前を見ると、ギフだー! ヒルトッピングから帰ってきたと思われるギフが、路上やや高いところをふわーと飛んでいる。慌てて車を飛び出したが残念無念、間一髪見失った。

 しかし、ここはいったいどこ? もしかして未知のポイントでは? さすがわが妻。最近あまり採集に同行しなくなったが、こうしてしっかり新産地発見のアシストをしてからに。褒めてつかわそう。

 ところがしかし、一瞬色めきたったもののよくよく地図で自分の居る場所を調べてみると、ちょうど既知産地である小原村五六の付近だった。この後、辺りを探してみたが追加も無く、ポイントらしい場所も見つからなかった。

《 明智町下吾妻 》

 そんなこんなで下吾妻着が3時過ぎとなったが、まだ採集者が1人いて、1頭振り逃がしたとのこと。時期的に少し早いかもと心配していたが、既に発生していることが確認できた。明日はここへ来ることに決めた。 

[記録]4月10日(土) 同行者 なし

愛知県瀬戸市白岩町 ギフ 1♂2♀

岐阜県笠原町潮見公園 ギフ 3♂1♀(他1♂鳥食われリリース)

愛知県瀬戸市上半田川町 ギフ null

愛知県小原村道慈 ギフ 5♂

愛知県小原村五六 ギフ 1ex.目撃

岐阜県明智町下吾妻 ギフ null

 


■ 4月11日(日) 近場のギフ(パート3)

 3月下旬には寝返りも打てないほどだった腰痛も、無理してギフ採集に行ったのがかえって適度な運動となったらしく、この日の朝は洗面所で顔を洗うのが辛くない。なんて都合良くできた身体なのだろうと、我ながら呆れる。

《 明智町下吾妻 》

 当地は以前、「蟲だより」に詳しいポイントマップが載っていた。マップの鉄塔ポイントへ朝から張り切って登ろうとすると、間一髪、別の採集者に先を越され少し気分は重いが、久々に体調が良くて身体は軽い。マップには「急登!!!」と書いてあるが、この程度の登りなら今日の体調なら1日5-6本は“朝飯前”だ(と、この時は思った)。

 鉄塔ポイントは朝から日当たりが良く、ギフはポツポツ見られたが多くない。10時には既に暑すぎる感じとなってしまい、10時半には早々に下った。

 次に奥の谷部の発生地ポイントを覗くも気配無く、ここから続く小径を登るうちにピークまで行き着いてしまったが、8合目あたりから上は小径も途切れがちでブッシュもきつく、ピークにはほんの少し空間があるだけで望み薄と思われた。

《 旭町浅谷 》

 浅谷(あざかい)は相当以前から記録を目にするので、それなりに有名なのだろう。しかし、情報日照りの私はポイントを知らないので、周辺を車で流してみるがこれといった場所が見つからない。とりあえず、地形図で目星を付けておいた小学校裏の小ピークに登ることにする。

 登り始めてすぐに1♂がブルーネット目がけて飛んできて、まずは幸先よし。しかし、この日3本目の登りながらこれくらい“朝飯前”と思ったが、既に正午を回っているのに“昼飯前”だったのが失敗だった。日ごろの運動不足に空腹が重なって、ピークを目前に急にガス欠となり、東京国際女子マラソンの “高橋尚子状態” に陥ったのだ。今さっきまであんなに快調だったのに、あと少しの所で全く足が上がらない。

 やっと辿り着いたピークには小さな社があって広場になっており、ギフが溜まるには格好と思えたが、残念ながら何も居なかった。しばらく放心状態でぼうっとし、集中力が切れたところへ杉の梢からブルーネットを急襲され、あえなく振り逃がしとなった。 

[記録]4月11日(日) 同行者 雅恵

岐阜県明智町下吾妻 ギフ 3♂(内1♂雅恵)

愛知県旭町浅谷 ギフ 1♂

 


■ 4月18日(日) 近場?のギフ(パート4)

 このところの好天・高温続きで、近場のギフは既に遅い。しかし、腰痛が完治しておらずロングドライブには不安がある。

《 東白川村久須見 》

 目いっぱい遠出してこの辺が限界。ここまで来ると「近場」でもないが…。

 当地はかなり前の「蟲だより」に記録が載っていて気になっていたのだが、これまで行く機会が無かった。東白川村へ足を踏み入れること自体初めてだが、どこも植林が進んでいて魅力に乏しく感じる。久須見も「ここは」という決め手が無いまま車で流しているうちに、ちっぽけな伐採地になぜかピンときた。足を踏み入れると、いきなりヒット! しかし、予想したこととはいえ、かなりボロである。狭い範囲だが密度は高く、時期が合えば楽しめそうだ。

※ 現在は大規模な道路が通って環境が破壊されている可能性がある。
※ 現在は大規模な道路が通って環境が破壊されている可能性がある。

《 下呂町久野川 》

 当地には95年4月15日に1回来ているのだが、その時はポイントを見つけられないまま惨敗した。今、地形図を見ると、どうしてあの時はここを探さなかったのだろうと不思議に思える場所がある。

 行ってみると、ここもいきなりヒット! この間9年の歳月が流れ、飽きもせず毎年ギフをやっていれば、さすがに三流が二流くらいにはなるわなぁと、何やら独り感慨に浸る。しかし、ここも予想通り時期的に遅く、そのうえ数も少なかった。

《 付知町中野~正ヶ脇、稲荷~稲荷平 》

 連続ヒットで気を良くしたところで、最近採れていないらしい付知町に挑戦。国道257号を走りながら感じるのは、加子母村から付知町にかけては山の規模が大きすぎて、いまいちギフの匂いがしない。しかも植林が凄まじく、限りなくやる気が失せる。

 それでも南下を続けて福岡町との境界付近まで来ると、急に周囲の山が適正規模になってくる。過去に記録のある稲荷-稲荷平は、ちょうどこの付近だ。全体的に杉の植林と宅地開発で環境は悪化しているが、まだ少しくらい発生していても不思議でない気はした。稲荷では僅かながらカンアオイも見られた。

 ついでに、正ヶ脇では大タラノメ林を発見。伐採地一面にタラノメが密生していて、「純林」に近い。仮にも全部摘み採れば、軽トラ一車くらいにはなりそうな気がした。

《 坂下町下外 》

 続いて坂下町。ここも最近採れていないらしい。

 坂下町内を車で走ると、お見事!と思えるほど完璧に植林されている。坂下町ではその昔、熱心にギフの放蝶をしている人が居たと記憶しているが、現状を見ると実に皮肉としか言いようがない。

 坂下町下外(しもそで)は、私がまだギフを始めたばかりの85年4月29日、当時「名古屋昆虫館報第4号」にマップが載っていた南木曾町柿其で、ギフ卵とチャマダラセセリを採集した帰途に立ち寄った。もう19年も前のことなのに、つい数年前のことのように思い出される。細長い台地上の、当時開墾されて間もない農地の一角に猫の額ほどの雑木林が残されていて、14卵塊74卵を確認、内16卵を採集した。あの時の雑木林が残っていることを祈りながら現地へ向かったが、19年前の夢の痕は夢と消えていた。私も少し歳をとった気がした。

[記録]4月18日(日) 同行者 なし

岐阜県東白川村久須見 ギフ 2♂スレ(他2♂2♀ボロ、リリース)

岐阜県下呂町久野川 ギフ 1♂スレ(他1♂ボロ、リリース)

岐阜県付知町中野-正ヶ脇、稲荷-稲荷 ギフ null

岐阜県坂下町下外 ギフ null

 


■ 4月29日(木祝)-5月6日(木) クアンタンのダンフォルディフタオ(マレーシア)

 前年の8月、当時クアラルンプール(KL)在住O氏に案内していただいたクアンタン。運よくダンフォルディ1♂を仕留めたものの、8月は端境期とのことだったので今回この時期に出直した。

 滞在5日間のうち3日間ダンフォルディ・ポイントへ通い、期待を超える3♂6♀の大成果となった。

 滞在中1滴も降らなかった雨が、帰途、ホテルを出た時にポツポツきたと思ったら空港へ向かうまでの間に豪雨となり、KL行きの国内線がなかなか飛ばず、帰国便に乗り遅れてひどい目に遭った。

[記録]4月30日(金)-5月4日(火) 同行者 雅恵

パハン州クアンタン(マレーシア)

ダンフォルディフタオ 3♂6♀ カンダイナズマ 1♂(雅恵採集) マラッカーナベニボシイナズマ 1♀ ミアーミスジ 1♂1♀ フェレティアキララシジミ 1♂ イチジクシジミ 1♀ ドゥードリクスタカネフタオツバメ 1♂ マヤアンジェラルリシジミ 1♂ アブセウスムラサキシジミ 3ex. アゲラストゥスムラサキシジミ 2ex. 等々、5日間で218頭採集。

 


■ 6月13日(日) 伊那谷のキマルリ(パート1)

 6月のある朝。出勤前の慌しい時間に電話が鳴った。大阪のN氏からだ。彼とは最近ご無沙汰していて、この前会ったのがいつだったか思い出せないばかりか、電話で話すのさえ随分久しぶりに感じられる。久しぶりの友人からこんな時間に電話があるのは、良くない知らせに違いない。―― 誰か死んだか?

「今度の日曜、どっか行くん?」

「へ??? 別に、予定は無いけど…」

「そしたら、天龍行かへん?」

「テンリュウ? 何が採れてるの?」

“テンリュウ”と聞いて、静岡県の天竜市しか思い浮かばなかった私は、正直またどうせ浜北大橋辺りの河川敷で、アオタテハモドキかホシボシキチョウでも採れているのだろうと思った。

「キマルリが採れてるんよ」

「えーっ!! いくいくいく、行く。連れてって、連れてって」

 この時点でまだ、静岡の天竜でキマルリが採れていると思っているのだから我ながらおめでたい。どうやら私の情報日照りは、かなり深刻のようだ。

 こうして、N氏が友人と2人がかりで2年かけて春や秋にも下見に通って見つけたという、長野県天龍村のほか南信濃村のキマルリを、何の苦労もなしに採らせていただいた。 

[記録]6月13日(日) 同行者 大阪のN氏

長野県南信濃村 キマルリ 1♂

長野県天龍村 キマルリ 1♂1♀(内1♀はトラ)

 


■ 6月19日(土)・20日(日) 伊那谷のキマルリ(パート2)

 先週教えてもらったポイントへ、今度は雅恵を連れて行く。1泊2日で、2人でガッポリ採ろうという目論見である。

 しかし、怠慢にも南信濃村着が1時半だったため、お目当てのポイントは先客2人に押えられており、もう1か所のポイントもすでに3人入っていた。天龍村はもう遅いと思い、仕方なく南信濃村内を、あまり採れそうにないサブポイントや自分で見つけた桜並木など適当に叩いて回ったところ、幸い桜並木で1♀出た。何の苦労もしていないけれど、一応自力で見つけたポイントなだけに、嵐のようなテリトリータイムにポイントを独占できると思いよだれを垂らして待った。が、いつまで待ってもなぜか全然飛ばない。桜はうんざりするほどあり、現に1♀出たのだから少しは飛んでも良さそうなものを…。世の中そんなに甘くないようだ。この分だとメインポイントの方もきっと貧果だったろうと帰り際に覗いてみると、何と、ニコニコで帰っていくところだった。はよ帰らんかいコラッ!

 翌21日は天気予報が悪かったせいか、昨日の連中は全員帰ったようでポイントには誰も来ない。ザマぁみろ。今日こそポイントを独占だ。キマルリは少々天気が悪くても採れるんじゃ、バカたれ。(念のため、私本人はこんな下品なおっさんではありませんので、誤解なきよう。)

 一通り叩いたが午前中はさすがに出ず、新ポイントを求めてあちこちウロウロし、美味い蕎麦屋を見つけて昼飯を豪勢に食い、店を出たら、雨だった…。

 蛇足ながら、この時期にオナガシジミが採れたのには驚いた。

[記録]6月19日(土) 同行者 雅恵

長野県南信濃村 キマルリ 1♀

6月20日(日) 同行者 雅恵

長野県南信濃村 キマルリ 1♀  オナガシジミ 1ex.

 


■ 6月26日(土) 朝明渓谷のオソマツ

 行っただけ。ホント、行っただけ…。

[記録]6月26日(土) 同行者 なし

三重県菰野町朝明渓谷 ヒサマツ null

 


■ 7月3日(土)・4日(日) 原村のウラキン

 原村のウラキンは最近の私の「お気に入り」に入っていて、今回で3回目。

 直前にペンション・ファーブルに電話したところ、今年は5月にひどい遅霜に見舞われ、幼虫は今までで一番少なかったから「今年は来ない方が良い」と言われた。「来ない方が良い」とまで言われて、それでもなお行ってしまうヤツというのも、よっぽど好きとしか言いようがない。

 当地でのこれまでの記録は、                            

  01年7月7日(土) 28ex.(内1ex.雅恵) [主にA・Bポイント] 発生盛期         
  01年7月8日(日) 10ex.(内3ex.雅恵) [主にA・Bポイント] 発生盛期
  02年7月5日(金)   9ex. [主にCポイント] 発生初期
 

02年7月6日(土)

15ex.

[主にCポイント] 

発生初期

 今回2年振りに行ってみると、Aポイントはカラマツ以外ほとんど伐採されてしまいほぼ壊滅状態。Cポイントは元々別荘地だが、さらに開発が進んでところどころ消滅した場所もある。このポイントは元々密度が低いので昼間の叩き出しは効率が悪く、低い木でテリを張る場所があるので夕方が狙い目となる。Bポイントは健在で、テリタイムには相変わらず沢山見られたが、何せ木が高いので大抵は指をくわえて見ているだけに終わる。昼間は低い所に降りているが、夕方見られる数から推測して降りているのは一部だけのような気がする。A-C以外にもきっと良いポイントがあるに違いないが、他の場所は正直あまり探していない。

 なお、特にBポイントに関して、過去の私のマップがアバウトすぎて分かりにくい(全然分からん!)というご指摘があったので、お詫びの意味も込めて多少マシなのを次に載せた。

 さらに、前回、記録を「原村物見山」としてしまったのだが、「原村横見山」の誤りでした。(「物見山」は万博反対で揺れた瀬戸市海上の森だよ。アホ!)。

 < Bポイント概念図 >

[記録]7月3日(土) 同行者 雅恵

長野県原村横見山 ウラキン 10ex.(内2ex.雅恵) メスアカ 3♂ ウラゴ 2ex.(内1ex.雅恵)

7月4日(日) 同行者 雅恵

長野県原村横見山 ウラキン 11ex. メスアカ 1♂  ウラゴ 1ex.

 


■ 8月16日(月) 越後湯沢かぐらスキー場のベニヒカゲ

 この夏は南から湿った空気が日本列島に流れ込み、大気の不安定な状態の日が続いた。こんな時は、名古屋では晴れていても山の上の天気は当てにならない。そんなことを考えながら天気予報を見ていると、ついつい行きそびれて遂にこの日になってしまった。当地のベニヒカゲは平年で8月10日から15日頃が最盛期のようなのでもう遅いかもしれないが、このまま行かないときっと後悔するので思い切って行くことにする。

 苗場山登山口の駐車場に車を停めて登り始める。30分弱で和田小屋に着くが、何のことはない、ここにも結構車が停まっており、ここまで車で来ればよかった。和田小屋は超立派な建物で、「これが “小屋” かよ。だったら我が家はいったい…」と、愚痴の一つも言いたくなる。

和田小屋の目の前に急斜面のゲレンデが縦に長くそびえ、ここがベニヒカゲのポイントらしい。てっぺんまで標高差約300m。下の方は極めて密度低く、上へ行くほど密度が高くなる。と言ってもパラパラ程度で、急斜面を喘ぎ喘ぎ一番上まで登って、やっとこさ2♂13♀。時期的に遅いと思われるのに、♂も含めて全て新鮮なのは採集圧のせいだろう。

 ここで、ゴンドラリフトの山上駅から向こう側へ降りる林間コースがあるのに気付いて、少し行ってみる。幅は狭いが草地になっていて、ベニヒカゲがウワッと発生していた。密度的には手前のゲレンデとは桁違いである。♂:♀≒1:2だが♀もかなりボロが混じり、採集圧がかかっていないとこんなにも様子が違うものかと変に感心する。

 翌日は八海山へ登る目論見だったが時期的に遅そうなので自重し、代わりに地酒の「八海山」を買って帰った。 

 

[記録]8月16日(月) 同行者 雅恵

新潟県南魚沼郡湯沢町かぐらスキー場 ベニヒカゲ 7♂28♀

                 (白帯25♀、黄帯3♀)


■ 12月22日(水)-26日(日)年末恒例ランカウイ島(マレーシア)

 9回目となったランカウイ島。いつもなら正月休みを利用して行くところ、別に「虫が知らせた」というわけでもないが、珍しく休暇を取っていつもより1週間早く行った。帰国して数時間後にスマトラ沖地震が起きた。ランカウイ島の津波被害は他と比べれば大きくなかったが、それでも死者も出たらしい。

 さらにもう1つ、新聞に載らない大事件が。

 滞在2日目の朝、キサップのポイントで東京の三浦正恒氏とばったり会った。思いがけない出会いに私のテンションは高かったが、三浦氏はいつもと少し様子が違い、どことなくよそよそしく感じられた。間もなく三浦氏が気まずそうに切り出した。

「大岡さん、実は明日、鳩山さんが来るんですよ。悪いけどこのポイント、遠慮してくんない?」

 何だ、そんなことならおやすい御用だ。元々このポイントだって三浦氏が見つけたポイントで我々が採らせていただいているわけだし、それに「鳩山さん」とは言わずもがなの鳩山邦夫代議士のこと。御大のご光臨とあらば、言われなくともこっちから遠慮しようというもの。

 そして翌25日、私は他のポイントに入ったので全然知らずにいたわけだが、この日このポイントで三浦氏の身に起きた惨劇の一部始終については、TSU・I・SO №1161に鳩山邦夫氏が興奮冷めやらぬ様子で9ページにわたって書き綴っている。もしあの時、三浦氏から「このポイント遠慮して」と言われなかったら、きっと私もこのポイントへ入っており、そして不幸はこの私か、はたまた雅恵の身に降りかかっていたかもしれない。鉄人三浦氏だからこそ九死に一生を得たけれど、もしもヤワで軟弱な私や、まして雅恵だったら…。

[記録]12月23日(木祝)-25日(土) 同行者 雅恵

ホソバジャコウアゲハ 2♂(内1♂雅恵採集)  オビクジャクアゲハ 2♂(内1♂雅恵採集)

ニヌスカザリシロ 1♀(ランカウイ未記録)  アドゥノラミナミイチモンジ 1♂  

エグリゴマダラ 1♂  プロキシマキララシジミ 1♀  ヤソダキララシジミ 1♂

マヤアンジェラルリシジミ 1♂  アラコニアムラサキシジミ 4♂(内1♂雅恵採集)

アブセウスムラサキシジミ 4♂(内1♂雅恵採集)  ウィルデヤナムラサキシジミ 8ex.(内1ex.雅恵採集)  アムリタスソビキシジミ 2♂2♀(内1♀雅恵採集)  ドミティアトラフシジミ 1♂  フウライボウシジミ 1♀  等々、3日間で168頭採集。