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ノシャップ岬から利尻島を望む。

 かつて対馬を訪れたとき、晴れていると朝鮮半島が見えることがあると聞いていたが、晴れていたのに見えなかった。そんな体験のせいか、宗谷岬からサハリンが見えるとか、ノシャップ岬から利尻島や礼文島が見えるとか聞いても、どうせ遠くの方に薄らぼんやり小さく見えるだけだろうと勝手に思い込んでいた。

 それがどうだ。まさかこんなダイナミックに見えるだなんて‥。

ノシャップ岬付近から見た冬の利尻島(2019年1月1日)。
ノシャップ岬付近から見た冬の利尻島(2019年1月1日)。

 これはいかん。この写真を見たとき、心の中でそうつぶやいていた。自分の中の常識とあまりにかけ離れていた。こんな凄いものが、どうしてもっと衆目を集めないのか。それとも、自分が知らなかっただけなのか。まだ知らないことが多すぎる。そう思った。

 

 上の写真は、私の親戚が今年の元旦の朝に撮ったもの。宗谷岬で行われている大晦日の越年イベントとやらにわざわざフェリーに乗ってキャンピングカーで行き、宗谷岬で初日の出を見たあとノシャップ岬付近で撮ったらしい。

宗谷岬周辺概念図。
宗谷岬周辺概念図。

 かつて、宗谷岬にベニヒカゲを採集に行く計画を立てたことがある。あれこれ画策したが、結局、夏の北海道のあまりの旅費の高さにメゲて自重してしまった。宗谷岬は地の果てで、名古屋から2泊3日で行くにはちょっともったいないなと‥。

 もしあのとき何も知らずに宗谷岬を訪れて、ベニヒカゲを追い求めて何げに少し西へ流れ、導かれるようにノシャップ岬の近くの丘に登ったとしたら‥。眼前にたたずむ洋上の利尻島の姿を見て、少しは私の人生は変わっていただろうか。そう、マレーシアのジャングルではなく、北海道に取りつかれていたかもしれない。そんな想像をかきたてるに十分な、1枚の写真だった。