後悔しない家づくり(4) ー なめられたらいかんぜよ!

 注文住宅の場合、どの業者を選べば良いかでかなり困る。今どきどのハウスメーカーも「優れた耐震性」や「高気密・高断熱」をうたい文句にしていて、どこが本当に優れているのか見当もつかない。

 そこで、大手なら安心かというとそうでもなさそうだ。倒産した大手ハウスメーカーの富士ハウスは、以前「柱の太さ選べます」ということを平気でやっていた。「選べる」と言うと聞こえは良いが、3種類の太さの中から自分で選ばなければならない。誰だって太いほうがいいに決まっているが、柱の太さは当然、家の価格に直結する。「一番細いのを選んだ貧乏人は大地震が来て死んでも自己責任」と言われているようで気分が悪かった(だから倒産したんだな、きっと)。

 どうしてこうなってしまうのか。どうやら、大手には大手の悩みがあるらしい。中小なら「わが社はこれが売りなので、これしか出来ません」と言って通るところを、大手ともなるとそうもいかない。ある程度ラインナップを揃える使命がある。その結果「お客様のニーズに合わせて」「ご予算に合わせて」という口上で、安かろう悪かろう商品を売る大手が現れる。その一例が「柱の太さ選べます」ということなのだろう。だから、大手だから安心と思い込むのではなく、「豊富なラインナップ」とは「玉石混淆ラインナップ」かもしれない、という冷静な目で見る必要がある。

 そもそも大手ハウスメーカーと言ったところで、最大手の大和ハウス工業や積水ハウスでさえ業界シェアは僅か数%だという。近年、多くの業界で寡占化が著しく進む中で、この現実をどう理解するか。これは、大手ハウスメーカーでさえ、地場の建築会社や工務店に太刀打ちできないという証明だ。家の場合、施主の注文に応じて一軒一軒オリジナルで建てるということと、工場で規格品を大量生産することを得意とするメーカーの業態との間に、そもそもミスマッチがある。

 話が少しそれたが、ここでもうひとつ声を大にして言いたいことがある。例えば、「驚異の免震性能! 最新の免震テクノロジーを標準装備」とパンフレットにデカデカとうたってあったとする。ところが実際には、多数の商品ラインナップのうち免震システムが「標準装備」なのは最上級グレードだけ。パンフレットの半分以上のページを割いて素晴しい理念や最新技術について書かれているので当然全部に共通のことと思いきや、よくよく読むと、どれも最上級グレードの話であって他には関係ない。なんてことが平気でまかり通る業界である。

 そんなの車も家電もみんな同じで騙されるというか勘違いするほうが世間知らず、と言われるかもしれない。でも、実は根本的な違いがある。自動車や家電製品には必ずスペック表があるが、家にはそれがないのだ。だから、何が標準で何が標準でないのかがパンフレットやサイトを見ても容易には理解できない。それどころか、営業マンに尋ねても「すべて標準です」と繰り返すばかりで、営業マン自身も本当は分かっていないフシがある。

 この業界全体が情報公開に積極的でないというか、消費者に分かりやすく情報を提供しようとする姿勢が感じられないのだ。消費者をなめているとまでは言わないが、消費者の側から見れば、なめられていると思う。

 なぜそうなるのか。ズバリ、消費者が成熟していないからだ。家は建てても一生に1回かせいぜい2回だ。車なら初めは訳も分からず「カッコいいから」「安いから」という理由で買って、何度か買い換えるうちに、エンジン性能がどうの、リセールバリューがどうのと、消費者として徐々にでも知識を身に付けてくる。ところが家は、初めて建てて、後悔して、ハイそれまでよ、残念! で終わってしまう。消費者はみんな初心者、業者側が圧倒的に有利な構図だ。ここに、私がこの駄文を書き始めた動機もある。

中堅ビルダーのスペック表(一部画像処理あり)
中堅ビルダーのスペック表(一部画像処理あり)

 私の手元に、1枚の家のスペック表がある。スペック表と呼ぶにはあまりに簡単なものだが、かつて、こういうことに意欲的に取り組んでいた中堅のビルダーがあった。残念ながらこの会社は、リーマンショックであえなく倒産してしまった(会社更生法の適用を受けて、現在はリフォームを中心に営業しているらしい)。

 家を建てるということは、車なら10台分ぐらいの金を払うことであって一生の買い物なのだから、「スペック表をください。ないなら作ってよ」ぐらいのことを言っても、きっと罰は当たらない(でも、きっと嫌われるだろうな)。

(つづく)