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加齢に伴う目の病気(1)

 事の起こりは1年半前。コンタクトレンズの定期検査で、右目の度が少し進んだので度数を上げてもらおうとしたが、度数を上げてもなぜか視力が出ない。不思議に思って尋ねると、「一度、眼科で診てもらってください」と言われた。えっ、窓口で保険証の提示を求められているのに、ここは眼科じゃないのか?と内心思ったが、要は「ここは専門の眼科ではない」ということと理解した。

 緑内障のため定期的に近所の眼科に通っているので、次回行ったときに診てもらった。簡単な検査をしただけで、「原因は分かりません」とだけ告げられた。「そんな、あなた医者として無責任でしょう」と内心思ったが、要はそんなに心配するほどじゃないということと理解した。

 ところがである。右目の度はその後も進み、コンタクトをして左右とも0.9だった視力が、右だけ0.5まで落ちてしまった。このまま進むと次回の運転免許の更新ができなくなるのではないか。そう考えると無性に心配になってきた。そこで、次に眼科へ行ったときには強く訴えて、しっかり検査をしてもらった。しかし、結果はまたもや「原因不明」だった。

 そんな折りも折り、職場の上司が網膜剥離を患う。はじめ地元の眼科にかかったが「異常なし」と言われ、それでも症状が消えないので大学病院で診てもらったところ、即日入院、即日手術となった。一刻を争う状況で、「手術しても失明する可能性がある」と言われたらしい。

 これを聞いてビビりまくった私は、上司の入院中にすぐに休暇を取って大きな病院で診てもらうことにした。同僚からは「たった6人の職場で、2人も同時に入院になったらどうするんだ」とかボヤかれながら・・。

 大病院の医師は、私の右目を見るなり「これは白内障ですね」とのたまわった。その間、たった5秒ほど。近所の眼科で2回も「原因不明」と言われたのに、そんなに簡単に分かるものなのか。やっぱりセカンドオピニオンって大事なんだ。たった5秒で診断は下りたが、「ひととおり検査します」と言われて検査に半日かかった。すべての検査結果が出揃って、最後にもう一度「やはり白内障に間違いないですね」と、太鼓判を押された。いやはや、ご丁寧なことで。「3時間待ちの3分診療」とかが問題になるが、「5秒診断後の半日検査」はあまり問題にならないらしい。でも、医者はもう少し芝居を打ったほうがいいのではないかと思った。

 近眼から始まって老眼、緑内障、白内障と、50代半ばにして四大タイトル制覇のグランドスラムだか四拍子そろって眼病カルテットだか知らないが、とにかくジジくさいことになってきた。と、はじめは少し不貞腐れていたが、すぐに気を取り直した。白内障なら手術をすればいい。「原因不明」と言われて不安を募らせていたときのことを思うと、すっきり爽やか安心しまくり。病気と分かって精神衛生上はすっかり健康的となった。職場のみなさんからも「それは良かった」と喜んでいただき、「他人の病気を喜ばんでくださいよ」というセリフで笑いがとれるのだから、実に微笑ましい。あとはいつ手術するかだけの問題だ。そんなこんなですっかり安心してしまって、日常生活には今のところさしたる不便もないので、ついつい先延ばしにしている今日このごろである。