ビールと花粉症と私

 今年もスギ花粉の飛び散る季節がやってきた。これからしばらくは、花粉症に悩む人にとって1年で一番憂鬱な季節だろう。かくいう私は、20代終わりに突然花粉症を発症して10年余り苦しんだが、40歳のころに見事これを克服した。他人に話してもなかなか信じてもらえないが、以下は花粉症を克服した私の体験談、すなわち実話である。

 克服したといっても、正確には100%撃退したわけではない。症状が8割がた出なくなった、というのが正しい。ひどい時には箱ティッシュが手離せないほどで、ギフチョウを採りに行くと山の中でもマスクをして涙目で歩き回っていた(←怪しいオッさん)。それが今では朝起きたときに鼻をかむ程度で、それ以外はポケットテッシュ1個で1週間ぐらい大丈夫。外出時にマスクを着用するほかは特に対策も必要ない。もちろん、薬も飲んでいなければ医者にもかかっていない。  

 さて、これほど劇的に花粉症を撃退したその方法とは?

 この手の話で、とかく「○○を飲むと良い」とか「○○をすると良い」とか連想する人は、コマーシャリズムに踊らされすぎである。私の場合「✕✕をやめる」ことで花粉症を克服した。冷静に考えれば、成人病にしても体質改善にしても、生活習慣上の「良くないことをやめる」のが基本であり王道である。

 では、「✕✕をやめる」の✕✕とは何か? ズバリ「ビール」である。毎晩飲んでいたビールを一切やめたところ、あんなに苦しんでいた花粉症がウソのように治った。信じない人は信じなくていい。信じたくない人も信じなければいい。でも、私の場合、確かにそうなのだ。

 きっかけは偶然だった。職場の健康診断で何年か連続で尿酸値が高く出て、雅恵があんまり心配するので、仕方なく冬場になって晩酌のビールをワインかウイスキーに替えた。春になって、花粉症が出ないのが不思議でならなかったが、この時点ではビールと花粉症の因果関係など思いもよらなかった。

 夏になって暑くなると、当然のように晩酌のビールが復活した。結果、秋に健診でまたしても尿酸値で引っかかり、反省して再びビールを断った。翌春、花粉症が2年連続で出なかった。花粉症が出ないこと自体は喜ばしいのだが、なぜ突然出なくなったのか気になって仕方がない。そこである時、まさかと思いつつも自分の身体で人体実験を試みる。花粉の飛散たけなわの3月、試しにビールを飲んでみた。翌朝、別になんともない。次の晩もビールを飲んだ。やはりなんともない。4-5日これを続けたところ、ある朝目覚めるとドバッと鼻水が出た。見事なまでの花粉症の再発である。病気が再発したというのに、小さな達成感に包まれて、なんだか嬉しかった。

 こうしてビールと花粉症の因果関係を身をもって突き止めた私だったが、このことを周りの誰に話しても誰も信じてくれない。信じたくないのかもしれない。

「ビールをやめるくらいなら花粉症のままでいいよ」

こう言い放つやつまでいる始末である。

寒いときには飲まない方がいいらしい。暑いときには、またお世話になります。
寒いときには飲まない方がいいらしい。暑いときには、またお世話になります。

 しかし、実はビールは完全に断つ必要はない。都合のいいことに、寒くてそれほどビールが恋しくない冬場以降にやめれば十分なのだ。そして、スギ花粉が終わりヒノキも終了する5月の連休明けごろ、そろそろ初夏の日差しが強くなってビールが無性に恋しくなるこの時期に、めでたくビール解禁!としても何ら問題はない。こんなに都合の良い話は世の中そう多くはない。これだから意志薄弱な私でも花粉症を克服できたわけだ。

 以来約15年、ビールと花粉症と季節ですみ分けて上手く付き合ってきた。今では必ずしもビールだけが悪者ではなく、身体を冷やすことが良くないらしいことが段々分かってきた。幸か不幸か胃腸が丈夫でないので、加齢に伴い冷たいものをこれまで以上に身体が受け付けなくなってきている。結果、まだ寒さの残る春先に冷たいものをたくさん摂取することはなくなり、花粉症とはいよいよ疎遠となってきている。