· 

こだわりの逸品(1)

 何事にもあれこれこだわりを持つ面倒くさい性格の私は、当然のこと、着る物や持ち物にもついついこだわってしまうのだった。

 これまで使っていた財布が傷んできたので買い換えたいと思いつつ、使いやすさとデザイン性、耐久性、お手ごろ価格の四拍子揃ったアイテムにこだわって、なかなか買えないでいた。

 家の近所の「あかのれん」には980円均一の財布が山になっている。手にとって物色してみるが、学生じゃあるまいしさすがにこれでは可愛そうと、結局買えない。雅恵からは「そんなボロボロの財布を使っているぐらいなら、980円のほうがマシよ」と突っ込まれるが、どうせ可愛そうならボロボロを使い続ける可愛そうを選ぶ。

 前の職場は「ロフト名古屋」の中にあったので、仕事帰りに売り場に立ち寄ってみると、良さそうな財布がいっぱいあった。「これなんかいいな」と手に取ってみると、2万円也! 高い財布を買って中身がなくなったのでは元も子もないので、結局買えない。

 「中間の値段」のものはないのかと、あれこれ探すうちに2-3年が過ぎてしまった。

 昨日、休日出勤の帰りに「イオン ナゴヤドーム前店」に立ち寄ったところ、財布が沢山陳列されている売り場に遭遇した。見ると、探していた「中間の値段」の品がいっぱいある。やっぱ、あるところにはあるねえ、と夢中で物色していてふと気づく。

「バレンタイン ギフト コーナー」

 まずい。知らないうちは平気だが、気づいてしまうと恥ずかしい。でも、今日ここで買わなければ、また2-3年買えないような気がしたので、今日こそ絶対買おうと腹をくくった。

やっと見つけたこだわりの逸品。他人が見たらただの財布。
やっと見つけたこだわりの逸品。他人が見たらただの財布。

 あった。やっと見つけた。四拍子揃ったこだわりのアイテム。外側の革が固くて中が柔らかいので、使いやすいうえに耐久性も期待できる。デザインはシンプルだが、さりげなくお洒落でまずまず気に入った。値段がちょっとだけ高いが、十分満足してレジで支払いをしようとしたその時、店員が余計なことを言った。

「内使いでよろしかったですか?」

 思わず、「いえ、外で使うんですけど」とか、ボケそうになった。

 でもここで、「プレゼントです」と答えたらどんな顔をしただろうとか、綺麗な箱に入れてくれたのかなとか余計なことを考えつつも、そそくさと支払いを済ませてその場を立ち去るのだった。