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全国でクマ出没相次ぐ!

 今朝の中日新聞の朝刊によれば、全国でツキノワグマの出没が相次いでおり、目撃情報は統計を取り始めた2010年度以降最多だった年の2.5倍に当たる2080件に達しているという。

 Yahooニュースを見ると、クマに襲われて人が怪我をした事故が、昨日一日だけで全国で4件も発生している。

●クマに襲われ男性けが、足で蹴って撃退 小国・県内今季初(山形新聞9月23日)

●<クマ>男性襲われケガ 目撃相次ぎ長野・大町が警報発令(毎日新聞9月23日)

●クマ出没、けが人相次ぐ 福井県、警戒レベル最大に(産経新聞9月23日)

●夫婦がクマに襲われる 白川郷近くに出没 岐阜県白川村(朝日新聞デジタル9月23日)

 

 これからまだ本格的にクマは冬眠に向けた餌探しで徘徊するので、向こう1か月ほどはこの手のニュースが頻発しそうな勢いである。

 それにしてもギフチョウシーズンが秋でなくて春でよかったよ、なんてバカなことを内心思ったりするが、実際は春は秋より多少マシなだけで、山中の道なき道を歩き回る我々虫屋にとって他人事でない。

 ところで、クマの目撃情報が増えた原因について、産経新聞は「今年は山中の木の実が不作」のためとし、中日新聞は環境省の話として「昨年はえさとなる木の実が豊作だったため、多くのクマが冬を越すことができ、子グマも生まれやすかった」ためとしている。

 ここで重要なのは、そもそもクマの数それ自体が増えているという事実である。動物には一匹の動物が生きていくために必要とする土地の広さ、面積というものがあって、数が増えすぎると生息密度からくるストレスのため周辺のよその場所へ移動しようとする。食べ物が不作の年はこの面積が広く必要となり、過密によるストレスが高まって移動を引き起こす。ここで、不作が移動を引き起こす引き金となるには、生息密度がある程度飽和状態になっていることが前提としてある。山でゆったり暮らしている場合なら少々不作でも山の中で餌場を広げれば済むけれど、山はクマで溢れかえっている状態だからこそ、不作の年は弱いクマは山からはじき出されて里へ下るのだ。

 この基本的認識を、少し前までマスコミは全く持っていなかった。そして、「山に自然がなくなり、減っている動物がさらに餌の不作で山を追われて里におりてきている」という誤った報道が繰り返された。

 なわけないだろう! 山に自然がなくなっても里にはもっとないわけだから、里におりてくる理由にならんだろうが。動物はそんなバカじゃない! と、自称、昆虫少年は動物おじさんでもあるので、怒り狂ってしまったのでありました。しかし、いくら怒り狂ってみてもコンコンチキな報道は繰り返され、その影響あってか、都会の人の中には山で動物が増えているという事実をいまだかたくなに信じようとしない人も多い。

 クマに限らず、シカもカモシカもサルもイノシシもみんな増えている。特にシカは爆発的に増えていて、明らかに増えすぎている。――「猪鹿蝶(いのしかちょう)」のうち、減っているのは蝶だけだな、そういえば。

 動物が増えているのは自然が豊かな証拠だから良い事、と考える人がいるかもしれない。しかし、そうではないところに問題があるのだ。喋りだすと長くなるので、この問題については、またおいおい…。ということで。